株式全体像
証券会社
外務員試験では証券会社を「金融商品取引業者」、「取引参加者」、「協会員」と呼ぶ。
金融商品取引法では金融商品取引業者、
取引所定款では取引参加者、
協会定款では協会員と、法律や規則でそれぞれ別に定義しているためだ。
取引・売買
取引
上場株式→市場売買・市場外取引
非上場株式→店頭取引
市場売買 | 東京証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所がある。 また大阪取引所は市場デリバティブに強みがある取引所。 |
市場外売買 | 上場株券を取引所外で取引。 |
店頭取引 | 取引所に上場していない有価証券の取引。または取引所外で、有価証券の上場にかかわらず売買される取引。 |
売買
自己取引
証券会社が自社の資金で行う売買を自己取引と言う。
委託取引
売買注文を、顧客の資金において証券会社の名で行う取引。
証券会社が顧客からの注文を取引所で執行する場合は、だいたい委託取引。
売買の代理
売買注文を、顧客の名で証券会社が代理人であると顕名してする取引。
公開買付時に証券会社と顧客の間で代理人契約をして、証券会社が代理人となって買付けを行うことなどを言う。
売買の媒介
売り手と買い手の両当事者間を間を取り持つ取り持つこと
受託
受託に関する注意事項
有価証券の売買等の受託があったら、投資者保護や不公正取引を防止するため色々な確認義務がある。
投資者保護のため、取引に応じてそれぞれ取引開始基準 、契約締結前書面交付、確認書徴求義務を設けている。
注文執行・決済でも注文伝票の作成、契約締結時書面交付をしなければならない。
不公正取引防止のためには、売買の受託時点でインサイダー取引や仮名取引など法令で禁止された取引になってないか、顧客の属性を確認する。
顧客の住所、氏名、本人確認
証券会社は、有価証券を売買する顧客の氏名・住所・連絡先が書かれた顧客カードの整備を義務付けられている。また顧客から本人確認書類を求めるなどして、本人確認を行う必要がある。そして、取引時確認として、本人確認のうえ、取引を行う理由や職業の確認を行う。
勧誘
投資勧誘では、顧客の投資経験、 投資目的や資金力を把握し、顧客の意向、実情に適合した勧誘を努めなければならない。
顧客には投資は本人の判断と責任で行うことを理解させなければならない。当然、迷惑な時間に電話や訪問をしてはならない。
また、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ、契約締結前交付書面を交付する。例外として前に書面を渡しているなど投資者保護観点から大丈夫な場合は、交付しなくてもいい。
- 取引の概要、手数料・報酬、損失の恐れがあること
- その損失が預託すべき委託証拠金などの額を超えうること
安定操作期間中の受託
金商法では、誰であっても有価証券の相場を、固定、安定させるために、市場における一連の売買とその委託、また受託する行為を禁止している。
だが、例外として、有価証券の募集・売出しを円滑に行う目的で、買支え等の売買をして価格の安定を図る取引は要件の下、認められてる。この取引を安定操作取引と呼ぶ。
安定操作取引できる期間は、募集・売出しの価格決定の翌日から募集・売出しの申込最終日までである。
募集・売出しの発表日の翌日から払込日の期間をファイナンス期間といい、この期間中に作為的相場形成が行われる注文を受けているかなど注意する。
安定操作期間 | 募集・売出しの価格決定日の翌日から、募集・売出しの申込最終日まで |
ファイナンス期間 | 募集・売出しの発表日の翌日から払込日まで |
安定操作期間の禁止行為
- 元引受金融商品取引業者の禁止行為
元引受金融商品取引業者(主幹事証券会社)は、安定操作期間中における自社の資金による買付けが禁止されている。
そのため、自社が相手を伴う取引を顧客から受託できない。
例外に株式累積投資と株式ミニ投資については、自己の資金による買付けが伴うが問題ない。
- 安定操作取引またはその受託をしたの禁止行為
安定操作取引またはその受託をした証券会社は、その銘柄の株券等について、安定操作期間中、顧客に対して安定操作取引が行われた旨を表示しないで買付け・売付けを受託することは禁止である。
また、その売買に関する有価証券関連デリバティブ取引などを受託することも禁止。
空売り規制
空売りとは下落するだろう株券を借りてきて、その時点で売り、時間が経った後下落したその株を買い戻し、差益分で儲けようとする取引等を言う。
このような取引は、相場の下落の要因になったり、相場操縦の手口として使われることがあるので規制されている。
証券会社は、顧客から有価証券の売買の売付けの注文を受ける場合は、空売りであるか否かの別を確認しなければならない。顧客に関しても空売りであるか否かの別を明らかにする義務がある。
そして、証券会社は自己の資金による売付け、顧客から受託する売付け、いずれにおいても空売りの場合、取引所金融商品市場で行う空売りは取引所に明示する。
受渡し
株式の委託注文内容の確認
取引所では、顧客が証券会社に有価証券の売買の委託のたび、指示すべき事項を定ている。
- 売買の種類
- 銘柄
- 買付けか売付けの区別
- 数量
- 値段の限度
- 買付け・売付けを行う売買立会時
- 委託注文の有効期間
- 現物取引か信用取引の別
注文伝票の作成 |
顧客から売買を受託した場合、証券会社は必ず注文伝票を作成しなければならない。要件の下、電磁的記録も可 |
注文伝票の記載事項
- 自己か委託の別
- 顧客からの注文の場合、顧客の氏名または名称
- 取引の種類
- 銘柄
- 買付けか売付けの別
- 受注数量
- 約定数量
- 指値か成行の別
- 受注日時
- 約定日時
- 約定価格
契約締結時交付書面
顧客からの注文が執行され、売買が成立した場合、証券会社は内閣府令で定める契約締結時交付書面を作成し、遅滞なく顧客に交付し、
写しを保存しなければならない。契約締結時交付書面の交付の方法は、書面か顧客に電磁的方法の承諾を得て、交付する。
契約締結時交付書面の記載事項
- 証券会社の商号、名称または氏名、営業所または事務所の名称
- 顧客の氏名または名称
- 自己か委託の別
- 銘柄
- 単価
- 取引の種類など
- 手数料
- 買付けか売付けの別
- 約定数量
- 対価の額
共通
- 自己か委託の別
- 顧客の氏名または名称(注文伝票の場合は顧客からの注文時)
- 取引の種類
- 銘柄
- 買付けか売付けの別
- 約定数量
注文伝票のみ
- 受注数量
- 指値か成行の別
- 受注日時
- 約定日時
- 約定価格
契約締結時交付書面のみ
- 証券会社の商号、名称または氏名、営業所または事務所の名称
- 単価
- 手数料
- 対価の額
受渡し
株式を売買して、顧客が代金を渡して株券を受け取ること。または株券を渡して代金を貰うことを受渡しと言う。
取引所で普通取引で売買したときの受渡しは売買成立日から起算して三営業日の日(2日後)に行われる。
手数料
委託取引 | 株式売買注文成立時に、合意による委託手数料を受け取る。委託手数料の額は、完全自由。 |
仕切取引 | 取引所外で証券会社と顧客が直接売買する場合 ①委託取引と同様に委託手数料を受け取る。 ②売買値段に手数料相当分を含める。 |
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金融取引所の株式売買
種類
決済日による区分
当日決済取引 |
売買契約締結日に受渡決済をする。 |
普通取引 |
売買契約締結日から起算して3営業日の日に受渡決済を行う。最もポピュラー。 |
発行日決済取引 |
日本企業が株主割当てにより新たに発行する株券だけを対象にした取引。 |
※東京証券取引所では、取引所で証券会社間の決済で、取引相手の決済不履行による元本リスクを排除のため、DVP決済(資金と証券の同時受渡し)が導入されれている。
信用供与の有無による区分
現物取引 | 投資家が自己資金を使って株式を買う取引や自分が保有している株式を売却する取引。 |
信用取引 | 投資家が証券会社から購入代金を借りて株式を買う取引。
または、株券を借りてそれを売り付ける取引。 |
売買立会市場か否かの区別
立会内売買
立会売買ではオークション方式で行う。
オークション方式では、投資家に売り・買いの注文を銘柄、値段ごとに集計し、最も低い値段の売注文と最も高い値段の買注文とが合致して約定する個別競争売買で行われる取引。
立会外売買
立会外売買では、個別競争売買を行わず、だいたい売り手と買い手が合意した価格・数量などによるクロス取引で約定を成立させる取引。
クロス取引は、証券会社が、同じ銘柄について同じ数量、同じ価格での売り注文と買い注文を同時に発注して成立させることをいう。立会外売買は、電子取引ネットワークシステムを介して行われる。
・東証:ToSTNeT-1(単一銘柄取引、バスケット取引) ToSTNeT-2(終値取引) ToSTNeT-3(自己株式立会外買付取引)
・名証:N-NET
立会外売買は、ほとんど対象銘柄、信用取引の利用等は、普通の立会内売買と同じ。上場株式(国内株式でも外国株式でも)だけでなく、新株予約権付社債、ETF、J-REIT等でも取引対象となる。
立会外単一銘柄取引 | 単一銘柄のクロス取引 |
立会外バスケット取引 | 15銘柄以上で売買代金総額1億円以上で構成されるポートフォリオをワンセットで売買する取引。 |
終値取引 | 終値またはVWAP(売買高加重平均価格)により行う取引。 |
自己株式立会外買付取引 | 株式発行会社が自己株式を取得するための取引。 |
株式の店頭取引
店頭有価証券
店頭有価証券とは、取引所金融商品市場に上場されていない有価証券のこと。
店頭有価証券は、店頭取扱有価証券とそれ以外(青空銘柄)に分類できる。店頭取扱有価証券の中には、投資勧誘をできる</span class=”s”> フェニックス銘柄がある。
さらに、「株主コミュニティ銘柄」、「株式投資型クラウドファンディング」が、顧客に対して投資勧誘可能な店頭有価証券とされている
種類
店頭取扱有価証券 | 店頭有価証券のうち、有価証券報告書を提出しなければならない会社または会社内容説明書を作成している会社が発行する株券、新株予約権証券及び新株予約権付社債券。 |
フェニックス銘柄 | 店頭取扱有価証券のうち、金融商品取引所を上場廃止となった銘柄で、取引所に上場していた当時から保有するものに対して、流通の機会を提供する必要があると取扱会員になろうとする会員が判断したものであり、協会員が投資勧誘を行うものとして証券業界が指定したもの。 |
店頭取扱有価証券以外の店頭有価証券 | 店頭取扱有価証券以外の店頭有価証券は、青空銘柄と呼ばれている。
これは原則、投資勧誘できないが株主コミュニティ銘柄と株式投資型クラウドファンディング業務に係る株券が、顧客に対して投資勧誘が可能になっている。 |
株主コミュニティ
株主コミュニティとは、一つの店頭有価証券に対する投資意向を有する投資者を帰属させるための集合体をいう。株主コミュニティ銘柄は、一つの運営会員が株主コミュニティを運営し、投資勧誘を行う店頭有価商品
運営会員とは、株主コミュニティの運営を行うものとして教会が指定した証券会社をいう。
会員は、その会員が株式投資型クラウドファンディング業務において店頭有価証券を取り扱っている間は、株主コミュニティにおいて当該店頭有価証券の募集等の取扱いを行ってはならない。
株式投資型クラウドファンディング
金商法の改正で、株式投資型クラウドファンディング業務が第一種金融商品取引業の対象となった。
株式投資型クラウドファンディングは、会員等が店頭有価商品のうち株券か新株予約権証券について行う第一種少額電子募集取扱業務をいう。
会員は、自らが運営会員となっている株主コミュニティ銘柄の募集等を行っている間は、その株主コミュニティ銘柄について、株式投資型クラウドファンディング業務を行えない。
上場株式等の取引所金融商品市場外での売買
取引所金融商品市場外取引は、広い意味では「店頭取引」の一種であり、機関投資家(個人以外の投資家で証券投資を本業とする法人投資家)等からの大口売買注文を証券会社が相手方となって売買する場合に多く用いられる。
取引所金融商品市場との違い
一般的に上場株式等の取引所金融商品市場での売買は、取引所において価格優先、時間優先の原則で競争売買が行われる。対して、取引所金融商品市場外での売買は、取引所を通さずに証券会社の店頭で証券会社との相対交渉を行う。つまり、取引所金融商品市場での売買と取引所金融商品市場外では、同じ時間に成立した同銘柄の売買であっても価格が異なることがある。
対象となる有価証券
- 株券
- 出資証券
- 転換社債型新株予約権付社債券
- 交換社債券
- 新株予約権付社債、新株予約権証券
- 投資信託受益証券、外国投資信託受益証券
- 投資証券、外国投資証券
- 外国株預託証券(ADR)
売買価格等の確認と記録の保存
証券会社は取引所外取引を行う時、売買の価格または金額が適当であると認められるものであることを確認し、その確認の記録を保存しなければならない。
PTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)
PTS
取引所外取引の一つにPTSによる売買がある。
PTSとは、金商法によると、内閣総理大臣(法文条は内閣総理大臣だが、その権限の多くは金融庁長官になっっている)の認可を受けた金融商品取引業社の開設する「電子取引の場」であり、このPTSに対して投資家か証券会社が注文し、取引が行われる。
PTSによる信用取引も2019年7月から可能。
PTSの売買価格決定方法
- オークション(競売買)の方法
- 上場株式について、その株式が上場されている取引所の売買価格を用いる方法
- 店頭売買有価証券について協会が公表するその有価証券の売買価格を用いる方法
- 顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法
- 顧客が提示した指値が、取引相手方となる他の顧客の提示した指値と一致する場合に、その指値を用いる方法
- など
株式ミニ投資
方法
証券会社と顧客との間で行う取引所の定める1売買単位に満たない株式を、株式等振替制度を利用して行う売買取引。
投資家は株を購入したい時に単元未満株のまま機動的に任意の銘柄の買付けを行い、また、買い付けた単元未満株を単元未満株のまま売却することができる。
仕組み
取引単位等 |
・取引所の定める1売買単位の10分の1単位の株券の持分を取引単位にする。
・顧客から受託できる株数は、同一営業日、同一銘柄につき、1取引単位に9倍の単位までとする。
なぜなら、10倍になると1売買単位となり、ミニ投資ではなくなるから。
取扱対象銘柄 | |||
取引所に上場されている株券で単元株制度採用銘柄の中から、株式ミニ投資に係る取引の対象とする銘柄を選定する。 | 約定価格 | 株式ミニ投資に係る証券会社と顧客との約定価格は、約定日におけるあらかじめ定められた取引所の価格に基づき決定する。指値注文はできない。 | 約定日・受渡日 |
約定日 | 証券会社が顧客から注文を受託した日(注文日)の翌営業日 |
受渡日 | 約定日から起算して3営業日目の日 |
株式の上場
株式公開のメリット
・資金調達力の拡大 ・財産保全機能の拡大
・社会的信用の向上 ・経営管理体制の確立 ・企業のPR
株式の上場と公開価格の決定
株式の新規上場に際して、公開価格の決定方法は、ブックビルディング方式と競争入札方式による公募等の二種類がある。
ブックビルディング方式 | 新規上場申請者(上場予定会社)及び元引受取引参加者(幹事証券会社)である証券会社が以下の事項を総合的に勘案し、公開価格に係る仮条件を決定する。
・上場予定会社の財政状態と経営成績 その後ブックビルディングにより把握した投資者の需要状況、上場日までの期間における有価証券の相場の変動により発生し得る危険及び需要見通し等を総合的に勘案して、上場前の公募・売出しに際する公開価格を決定する |
競争入札方式 | 競争入札では、上場前の公開株式の50%以上の株式について一般投資家の参加する入札を行い、公開価格を決定する。
入札は総合取引参加者の証券会社が投資家から取り次ぐ競争入札の方法である。 入札後の公開価格は、上場申請会社及び元引受取引参加者が、入札における落札価格を加重平均した価格を基準として、その入札の実施状況、上場日までに株式相場の変動で発生し得る危険や入札後の需要の見通し等を総合的に勘案して決定される。 |