日本証券業協会の定款と規則
日本証券業協会の定款
日本証券業協会は、金商法の規定により第一種金融商品取引業を行う者及び登録金融機関によって組織され、内閣総理大臣の認可を受けた法人。
協会員の種類 |
会員 | 第一種金融商品取引業を行う者(証券会社) |
特定業務会員 | 特定店頭デリバティブ取引等業務のみ、株式投資型クラウドファンディング業務、商品関連市場デリバティブ取引取次ぎ等業務のみ |
特別会員 | 登録金融機関=銀行 |
目的 |
協会員の行う「有価証券の売買その他の取引等」を公正かつ円滑ならしめ、
金融商品取引業の健全な発展を図り、もって投資者の保護に資すること。
日本証券業協会の諸規則
自主規制規則 | 協会員の有価証券の売買その他の取引等に関する公正な習慣を促進して不当な利得行為を防止し、 取引の信義則を助長するために定める規則。 |
統一習慣規則 | 協会員の有価証券の売買その他の取引等及びこれに関連する行為に関する習慣を統一して、 取引上の処理を能率化し、その不確定、不統一から生じる紛争を排除するために定める規則。 |
紛争処理規則 | 協会員の業務に関する顧客からの苦情の解決及び有価証券の売買その他の取引等に関する顧客と協会員との間の 紛争解決のあっせん及び協会員相互の紛争の解決を図ることを目的とした規則。 |
投資勧誘・顧客管理等に関する規制
業務遂行の基本姿勢
協会員は、その業務遂行にあたっては常に投資者の信頼の確保を第一義とし、その他の法令諸規則等を遵守し、投資者本位の事業活動に徹しなければならない。
また、協会員は有価証券の売買その他の取引等に関し、重要な事項について、顧客に十分な説明を行うとともに、理解を得るように努めなければならない。
さらに、協会員は、顧客の投資経験、投資目的、資力等を十分に把握し、顧客の意向と実情に適合した投資勧誘を行うように努めなければならない(適合性の原則)。
自己原則の徹底
投資勧誘を行う際は、顧客に対し、投資は投資者自身の判断と責任において行うべきものであることを理解させる必要がある。
顧客カードの整備
協会員は、顧客調査、顧客管理の適正化を図る観点から、有価証券の売買等を行う顧客(特定投資家を除く)の顧客カードを備え付けなければならない。
・氏名または名称 ・投資目的 ・取引の種類 ・資産の状況
・住所または所在地及び連絡先 ・顧客となった動機 ・職業
・その他各協会員において必要と認める事項※本籍地、家族構成、
最終学歴は含まない。
勧誘開始基準
協会員は、顧客(個人に限る)に対し、販売種類ごとに勧誘開始基準を定め、その基準に適合した者でなければ、販売の勧誘を行ってはならない。
- 店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債に係る販売
- 店頭デリバティブ取引に類する複雑な投資信託に係る販売
- レバレッジ投資信託に係る販売
取引開始基準
ハイリスク・ハイリターンな取引については、慎重にやる必要があるため、協会員がそれぞれ取引開始基準を定め、その基準に適合した顧客との間で取引等の契約を締結しなければならない。
・信用取引※現先取引、着地取引、債券貸借取引、新株予約権付社債には取引開始基準はない。
信用取引には、取引開始基準は必要だが、確認書の徴求は必要ない。
・新株予約権証券の売買その他の取引 ・有価証券関連デリバティブ取引等 ・特定店頭デリバティブ取引等
・商品関連市場デリバティブ取引取次ぎ等
・店頭取扱有価証券の売買その他の取引 ・株主コミュニティ銘柄の取引等
・株式投資型クラウドファンディング業務に係る取引等 など
確認書の徴求
協会員は顧客(特定投資家を除く)と以下の取引の契約を初めて締結しようとする時は、
顧客が契約に係る契約締結前交付書面等に記載された金融商品取引行為についてのリスク、手数料等の内容を理解し、
顧客の判断と責任においてその取引等を行う旨の確認を得るため、顧客からその取引に関する確認書を徴求するものとされている。
・新株予約権証券等またはカバード・ワラントの売買その他の取引
・有価証券関連デリバティブ取引等、特定店頭デリバティブ取引等または商品関連市場デリバティブ取引取次ぎ等
注意喚起文書の交付等
協会員は、顧客(特定投資家は除く)と以下の有価証券等の販売に係る契約を締結しようとする時は、あらかじめ、その顧客に対し、注意喚起文書を交付しなければならない。
・有価証券関連デリバティブ取引等 ・特定店頭デリバティブ取引等 ・商品関連市場デリバティブ取引取次ぎ等
・店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債 ・店頭デリバティブ取引に類する複雑な投資信託
ただし、以下の場合はこの限りではない。
・販売に係る契約の締結前1年以内にその顧客に対し同種の内容の有価証券等の販売に係る注意喚起文書を交付している場合
・その顧客が目論見書の交付を受けないことについて同意している場合
高齢顧客に対する勧誘による販売
協会員は、高齢顧客(個人に限り、特定投資家を除く)に有価証券等の勧誘による販売を行う場合には、当該協会員の業態、規模、顧客分布及び顧客属性並びに社旗情勢その他の条件を勘案し、高齢顧客の定義、販売対象となる有価証券等、説明方法、受注方法等に関する社内規則を定め、適正な投資勧誘に努める必要がある。
店頭有価証券の投資勧誘の禁止
協会員は、店頭有価証券については、店頭有価証券規則に規定する場合を除き、顧客に対し、投資勧誘を行うことは禁止されている。
信用取引、新株予約権証券取引及びデリバティブ取引等の節度ある利用
協会員は、信用取引、新株予約権証券等の売買その他の取引、有価証券関連デリバティブ取引等、特定店頭デリバティブ取引等及び商店関連市場デリバティブ取引取次ぎ等の契約の締結については、各社の規模、業務の実情に応じて、節度ある運営を行うとともに、過度にならないよう常時留意する必要がある。
また、協会員は、顧客の有価証券関連デリバティブ取引等、特定店頭デリバティブ取引等及び商品関連市場デリバティブ取引取次ぎ等の建玉(取引において未決済の契約総数)、損益、委託証拠金、預り資産等の状況について適切な把握に努めるとともに、それらの取引等を重複して行う顧客の評価損益については、総合的な管理を行う必要がある。
主観的または恣意的な情報提供となる一律集中的推奨の禁止
協会員は、顧客に対し、主観的または恣意的な情報提供となる特定銘柄の有価証券または有価証券の売買に係るオプションの一律集中的推奨をしてはならない。
仮名取引の受託及び名義貸しの禁止
協会員は、顧客から有価証券の売買取引等の注文があった場合に、本人名義以外の名義を使用していることを知りながら、その注文を受けてはならないとされている。
協会員を含む金融機関には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)により、顧客の取引時確認が義務付けられている。
また、協会員は顧客が株券の名義書換えを請求するに際し、自社の名義を貸与してはならない。
会員の顧客に対する保証等の便宜の供与
会員は、有価証券の売買その他の取引等に関連し、顧客の資金または有価証券の借入れについて行う保証、あっせん等の便宜の供与については、顧客の取引金額その他に照らして過度にならないよう、適正に管理を行う必要がある。
特別会員(銀行)の自動的の信用供与の禁止等
特別会員は、登録金融機関業務に係る取引において、顧客に対して、損失の穴埋め、委託証拠金の新規または追加の差入れのための信用の供与を自動的に行ってはならない。また、特別会員は登録金融機関金融商品仲介行為に係る取引について、顧客に対しその顧客が会員に開設した取引口座に残高不足が
生じた場合に、信用の供与を自動的に行い、またはこれを行うことを約した登録金融機関金融商品仲介行為は行ってはならない。
内部者登録カードの整備
協会員は、上場会社等の特定有価証券等の売買を初めて行う顧客から、上場会社等の役員等にあたるかどうかについて届出を求め、その届出に基づき、上場会社等の役員等である場合は、上場会社等の特定有価証券等の売買が行われるまでに内部者登録カードを備え付けなければならない。
・氏名または名称 ・住所または所在地及び連絡先 ・生年月日 ・会社名、役職名及び所属部署※本籍地、家族構成及び
続柄は含まれない。
・上場会社等の役員等に該当することとなる上場会社等の名称及び銘柄コード
取引の安全性の確保
協会員は、新規顧客、大口取引顧客等からの注文の受託に際しては、あらかじめ当該顧客から買付代金、または売付有価証券の全部または一部の預託を受けるなど取引の安全性の確保に努める必要がある。
顧客の注文に係る取引の適正な管理
協会員は、有価証券の売買その他の取引等を行う場合には、顧客の注文に係る取引と自社の資金による取引とを峻別しなければならない。また顧客の注文に係る伝票を速やかに作成のうえ、整理・保存するとともに、自社に資金による取引と区分するための番号等を端末機に入力するなど、顧客の注文に係る適正に管理する必要がある。
従業員に関する規則
従業員
この規則で「従業員」とは、会員(証券会社)においてはその使用人で国内に所在する本店その他の営業所などに勤務する者。外務員は、従業員の中の、所属する協会員のために外務員の職務を行う者をいう。
従業員の採用
法令等違反行為を行った従業員への対応等
協会員は、従業員を採用する際の審査において採用しようとする者が二級不都合行為者としての取扱いの決定を受けた者であったこと等が判明した場合は、法令等違反行為の抑止及び投資者保護に係る研修等を行う必要がある。
採用の禁止
従業員に対する監督責任の所在を明らかにするため、協会員が、他の協会員の使用人を自己の従業員として採用することを禁止している。
ただし、出向により受入採用する場合については、この規制の対象外となる。
不都合行為者制度に基づき協会が一級不都合行為者として取り扱う者は、期限を設けず協会員の従業員としての採用は禁止してる。また、協会が二級不都合行為者として取り扱う者については、協会員は、その取扱いの決定の日から5年間は、これを採用してはならない。
協会への照会
協会は従業員として不適合な者、特に不都合行為者の取扱いを受けている者の排除に万全を期する理由から、従業員の採用前における照会制度を設けたいる。
協会員は、他の協会員の従業員または金融商品仲介業者もしくはその外務員であった者、または現に他の協会員の従業員または金融商品仲介業者もしくはその外務員であるものを採用しようとする場合は、一級不都合行為者としての取扱いについて、協会に照会しなければならない。
また、過去5年間のいずれかの時点において他の協会員の従業員、金融商品仲介業者もしくはその外務員であった者または現に他の協会員の従業員、金融商品仲介業者もしくはその外務員である者を採用しようとする場合は、二級不都合行為者などとしての取扱い及び決定・処分については、協会に照会しなければならない。
禁止行為
信用取引及び有価証券関連デリバティブ取引等の禁止
協会員は、その従業員はいかなる名義を用いているか否かを問わず、自社の資金で信用取引、有価証券関連デリバティブ取引、特定店頭デリバティブ取引または商品関連市場デリバティブを行うことがないようにしなければならない。
ただし、従業員が行う取引が、報酬の一部として給付されることが決定した株式やストック・オプションについては、一定の期間において、その保有にかかる価格変動リスクを減少させるためであり、専ら投機的利益の追求を目的としないものとしてその協会員の承諾を受けた場合は認められる。
「仮名取引」の受託の禁止
仮名取引とは、架空の名義や他人の名義を使用して取引を行い、その取引の法的効果を得ようとする等、口座の名義人とその口座で行われる取引の効果帰属者が一致しない取引のこと。
従業員は、顧客から有価証券の売買その他の取引等の注文を受ける場合において、本人名義以外の名義を使用していることを知りながら、その注文を受けてはならないことになっている。
しかし、特例として、名義人の配偶者及び二親等内の血族である者が名義人本人の取引として注文であることを明示して取引を発注した場合、その確認が行われているのであれば本人名義の取引とみなされる。
その他の禁止行為
- 顧客カード等により知り得た投資資金の額その他の事項に照らし、適当な数量の有価証券の売買その他の取引等の勧誘を行うこと。
- 有価証券の売買その他の取引について、顧客と損益をともにすることを約束して勧誘し、または実行すること。
- 顧客から有価証券の売買その他の取引等の注文を受けた場合において、自己がその相手方となって有価証券の売買その他の取引等を成立させること。
- 顧客の有価証券の売買その他の取引、有価証券関連デリバティブ取引、特定店頭デリバティブ取引または商品関連市場デリバティブ取引または有価証券名義書換えについて、自己もしくは親族、その他の自己と特別な関係にある者の名義または住所を使用させること。
- 自己の有価証券の売買その他の取引等について、顧客の名義または住所を使用すること。
- 顧客から有価証券の名義書換え等の手続きの依頼を受けた場合において、所属協会員を通じないでその手続きを行うこと。
- 顧客から所属協会員に交付するために預託された金銭、有価証券または所属協会員から顧客に交付するために預託された金銭及び有価証券を、遅滞なく相手方に引き渡さないこと。
- 所属協会員から顧客に交付するために預託された業務に関する書類を、遅滞なくその顧客に交付しないこと。
- 有価証券の売買その他の取引等に関して、顧客と金銭、有価証券の貸借(顧客の債務の立替えを含む)を行うこと。
- 職務上知り得た情報を漏洩すること。
- 広告審査担当者の審査を受けずに、従業員限りで広告等の表示または景品類の提供を行うこと。
- 顧客から有価証券の売付けの注文を受ける場合において、当該有価証券の売付けが空売りであるか否かの別を確認せずに注文を受けること。
- 顧客から注文を受けた空売りを他の会員に委託する場合において、当該空売りに係る有価証券につき直近公表価格以下の価格で当該空売りを行うよう指示すること。
- 投資信託受益証券等の乗換えを勧誘するに際し、顧客(特定投資家を除く)に対して、当該乗換えに関する重要な事項について説明を行わないこと。
- 会員に係る有価証券の売買その他の取引において、顧客が反社会的勢力であることを知りながら契約の締結をすること。
- 顧客に対して、融資、保証等に関する特別の便宜の提供を約し、登録金融機関業務に係る取引を勧誘すること。
- 登録金融機関業務に係る取引について、明らかに委託証拠金の新規または追加差入れとなるような信用の供与を行うこと。
不適切行為
協会員は従業員の以下の不適切行為を行わないよう指導及び監督する必要がある。
- 有価証券の売買その他取引等において、銘柄、価格、数量、指値または成行の区別等、顧客の注文内容の確認を行わないまま注文を執行すること。
- 有価証券等の性質や取引の条件について、顧客を誤認させるような勧誘を行うこと。
- 有価証券の価格等について、騰貴または下落することに関し、顧客を誤認させるような勧誘を行うこと。
- 顧客の注文の執行において、過失により事務処理を誤ること。
不都合行為者制度
審査の結果、その従業員等が退職し、または協会員より解雇相当の社内処分を受けた者で、かつその行為が金融商品取引業の信用を著しく失墜させるものと認めたときは、決定により、その者を不都合行為者として取り扱うこととし、外務員資格、営業者責任者資格及び内部管理責任者資格を取り消す。
またこのうち、特に金融商品取引業の信用への影響が著しい行為を行ったと認められる者は一級不都合行為者として取り扱い、その他の者を二級不都合行為者として取り扱う。
特定有価証券に係る売買
協会員は、従業員における上場会社等の特定有価証券に係る売買等に関し、従業員の範囲に関する事項や売買等の手続きに関する事項などについて規定した社内規則を定める必要がある。
協会員の外務員の資格・登録等に関する規則
外務員とは
外務員とは、協会員の役員または従業員のうち、その所属協会員のために、外務員の職務を行う者をいう。
一種外務員 | 外務員の職務のすべてを行うことができる者。 |
信用取引外務員 | 二種外務員の外務員職務、信用取引及び発行日決済取引に係る外務員行為を行うことができる者。 |
二種外務員 | 有価証券に係る外務員の職務及び有価証券等精算取次ぎに係る外務員の職務を行うことができる者。 |
<二種外務員が行うことができない外務員職務> ・有価証券関連デリバティブ取引等、選択権付債券売買取引、信用取引、発行日決済取引、新株予約権証券、カバード・ワラント等に係る外務員の職務 ・店頭デリバティブ取引に類する複雑な仕組債、店頭デリバティブ取引に類する複雑な投資信託及びレバレッジ投資信託に係る外務員の職務。 例外として、信用取引及び発行日決済取引については、所属会員の一種外務員、信用取引外務員が同行して注文を受託するものに限り行うことができる。 |
|
特例商先外務員 | 商品関連市場デリバティブ取引等に係る外務員の職務を行える者。 |
特例商先外務員 (ディーリング限定) |
協会員の計算(資金)による商品関連市場デリバティブ取引(いわゆる自己取引)に係る外務員の職務を行える者。 |
外務員資格
外務員は営業所、事務所の内外に問わず協会員に代わって職務を行い、その効果は直接協会員に帰属する。協会員は、その役員または従業員のうち、外務員の種類ごとに定める一定の資格を有し、かつ外務員の登録を受けた者でなければならない。
登録
協会員は、その役員間tは従業員に外務員の職務を行わせる場合は、その者の氏名、生年月日その他の事項につき、協会の備える外務員登録原簿に登録を受ける必要がある。また、協会員は、登録を受けている外務員について、氏名等に変更があったとき、退職その他の理由により外務員の職務を行わないこととなった時は、遅滞なく所定の様式によりその旨を協会に届け出なければならない。
処分
協会は、登録を受けている外務員が金融商品取引法上の欠格事由に該当した時、金融商品取引業のうち外務員の職務またはこれに付随する業務に関し法令に違反したとき、その他外務員の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認められる時は、その登録を取り消し、または2年以内の期間を定めて外務員の業務の停止の処分を行うことができる。
資格更新研修
外務員登録を受けている外務員 | 外務員登録日を基準として5年目ごとの日の属する月の初日から1年間 |
外務員登録を受けていない者 | 新たに外務員の登録を受けたときは、外務員登録日後180日 |
受講義務期間の初日前2年以内に外務員試験に合格した者は、外務員資格更新研修を受講して修了したものとみなされる。
資格の効力停止・取消し
受講義務期間内に外務員資格更新研修を受講することできなかった場合には、外務員資格更新研修を修了するまでの間、すべての外務員資格の効力が停止し、外務員の職務を行うできなくなる。
また、受講義務期間の最終日の翌日から180日までの間に、外務員資格更新研修を修了しなかった場合には、すべての外務員資格が取り消され、外務員の職務を行うことができなくなる。
資質の向上のための社内研修の受講
協会員は、登録を受けている外務員について、外務員について、外務員資格更新研修とは別に、毎年、外務員の資質の向上のための社内研修を受講させる必要がある。
有価証券の寄託の受入れ等に関する規制
寄託の受入れの制限
協会員が顧客から有価証券の寄託を受けることができるのは、以下の5つのケースに限定されている。
単純な寄託契約 | 協会員が顧客から有価証券の保管の委託を受け、その有価証券を顧客ごとに個別に保管する。 |
委任契約 | 顧客から有価証券に関する常任代理業務に係る事務の委託を受ける場合など。 |
混合寄託契約 | 複数の顧客から預託を受けた同一銘柄の有価証券を混合して保管し、返還の時は、各自の寄託額に応じて混合物から返還する。 |
協会員が質権者 | 協会員が質権者である場合とは、例えば、顧客から有価証券を信用取引の保証金等の担保として預かる場合などがある。 |
消費寄託契約 | 受託者(預かる側)が寄託物を消費し、後日、同種同等同量のものを返還する約束する寄託。顧客から消費者寄託契約により有価証券の寄託を受けるときは、契約書2通を作成して、その1通を顧客に交付し、もう1通を保存しなければならない。 |
保護預り契約
保護預り契約の締結
- 会員及び特別会員(銀行)は、顧客から単純な契約または混合寄託契約で有価証券の寄託を受ける時は、顧客と保護預り契約を締結しなければならない。
- 保護預り契約を締結するときは、顧客から保護預り口座設定申込書を受け入れ、保護預り口座を設定した場合は、顧客にその旨を通知しなければならない。
- 抽選償還参考される可能性のある債券を混合寄託契約で受け入れるときは、抽選方法等の取扱いについての社内規程を設け、事前に顧客に了承を得なければならない。
- 保護預り口座を設定した場合、会員及び特別会員は顧客から単純な寄託契約または混合契約により寄託を受けた有価証券は、すべてその口座により出納保管しなければならない。
保護預り契約の適用除外
- 累積投資契約に基づく有価証券
- 常任代理人契約に基づく有価証券
- 国内CP など
保護預り約款
保護預り約款とは、有価証券の「保護預り」に関し、受託者(預かる側)である会員または特別会員と寄託者(預ける側)である顧客との権利義務関係を明確にしたもの。
保護預り証券の保管 | 保護預り証券は、原則として会員が保管。なお、金融商品取引所または決済会社の振替決済に係る保護預り証券については、決済会社で混合保管。 |
保護預り証券の返還 | 保護預り証券の返還は、各会員所定の手続きを経て行う。 |
照合通知書及び契約締結時交付書面
照合通知書による報告
会員は、顧客の債権債務の残高について、顧客の取引区分に従って、それぞれに定める頻度で照合通知書により報告しなければならない。
ただし、その顧客が取引残高報告書を定期的に交付している顧客である場合で、取引残高報告書に照合通知書に記載すべき項目を記載している場合には、照合通知書の作成・交付が免除される。
①有価証券の売買その他の取引のある顧客 | 一年に一回以上 |
②有価証券関連デリバティブ取引、特定店頭デリバティブ | 一年に二回以上 |
③金銭または有価証券の残高がある顧客で①②の取引または受渡しが一年以上行われていない顧客 | 随時 |
照合通知書の記載事項
照合通知書に記載すべき主な事項は金銭または有価証券の直近の残高。
- 立替金、貸付金、預り金または借入金
- 単純な寄託契約、委任契約、混合寄託契約または消費寄託契約に基づき寄託を受けている有価証券
- 質権の目的物としての金銭または有価証券 など
なお、金銭及び有価証券の残高がない顧客の場合でも、直前に行った報告以後1年に満たない時期にその残高があった場合には、照合通知書により、現在は残高がないことを報告しなければならない。
照合通知書の作成・交付
- 照合通知書の作成は、会員の検査、監査</span class=”s”>または管理を担当する部門で行うこととされている。
- 照合通知書を交付するときは、顧客との連絡を確保する趣旨から、住所、事務所の所在地または通知の指定した場所に、原則として、郵送しなければならない。ただし、照合通知書を直ちに交付できる場合であっても、顧客に店頭で書面を交付する場合や、顧客から特に申し出があり、協会で定める方法で処理するときは郵送以外の方法でも良い。
- 顧客から金銭または有価証券の残高について照会があったときは、会員の検査、監査または管理を担当する部門が受け付け、遅滞なく回答しなければならない。
契約締結時交付書面(取引報告書)の交付
契約締結時交付書面を交付するときも照合通知書と同様に、顧客の住所、事務所の所在地または顧客の指定した場所に原則郵送しなければならない。ただし、照合通知書と同様に(契約締結時交付書面を直ちに交付できる状態であれば)証券業協会の定める方法で処理すれば郵送に限らなくても良い。
また、顧客が法人等である場合は、主管責任者の承認を受けて契約締結時交付書面を顧客の事務所に持参して直接交付した時は、郵送で交付したものとみなす。
取引残高報告書制度
顧客が有価証券等の売買取引を行った場合、会員は、その売買取引の都度、契約締結時書面(取引報告書)を作成・交付するとともに、原則として四半期ごとに取引残高報告書を作成し、交付することを義務付けられている。
取引残高報告書は、約定報告に基づく受渡決済の状況とその後の残高を顧客に報告するための書面。
広告等の表示及び景品類の提供に関する規制
定義 | 金融商品取引業の内容について金融商品取引法などに規定する広告及び表示を「広告等の表示」と定義。 |
広告等の基本原則 | 協会員が広告等の表示を行うときは、投資者保護精神に則り、取引の信義則を遵守し、品位の保持を図るとともに、的確な情報提供及びわかりやすい表示を行うように努めなければならない。
また協会員は、景品類の提供を行う時は、取引の信義則を遵守し、品位を保持を図るとともに、その適正な提供に努めなければならない。 |
内部審査等 | ①協会員は、広告等の表示または景品類の提供を行うときは、広告等の表示または景品類の提供の審査を行う担当者(広告審査担当者 ×内部管理者)を任命し、禁止行為に違反する事実がないかどうかを広告審査担当者に審査させなければならない。ただし金商法の定める特定投資家のみを対象として行う場合は除く。 |
社内管理体制の整備 | 協会員は、広告等の表示及び景品類の提供の適正化を図るため、広告の表示及び景品類の提供に係る審査体制、審査基準及び保管体制に関する社内規則を制定し、これを役職員に遵守させる必要がある。 |
禁止行為 | 以下のいずれかに該当する広告を行ってはいけない。
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店頭有価証券に関する規制
店頭有価証券に関する規制
定義
店頭有価証券 | 日本企業が日本国内において発行する、取引所金融商品市場に上場されていない株券、新株予約権証券及び新株予約権付社債券。 |
店頭取扱有価証券 | 店頭有価証券のうち、継続開示会社または一定のレベル以上の開示ができている会社が発行する株券、新株予約権証券及び新株予約権付社債券。
継続開示会社または一定レベル以上の開示とは以下の要件のいずれかを満たしている場合である。 |
- 金商法に基づき有価証券報告書を内閣総理大臣に提出していること。
- 会員などが投資勧誘を行う際の説明に用いる会社内容説明書を作成していること。
店頭取引協会員が自己または他人の計算において行う店頭有価証券の売買その他の取引。
店頭有価証券の投資勧誘の禁止
協会員は、店頭有価証券については、原則として顧客に対し投資勧誘を行ってならない。例外は以下である。
- 経営権の移転等を目的とした取引に係る投資勧誘や適格機関投資家に対する投資勧誘を行う場合
- 企業価値評価等が可能な特定投資家に対し投資勧誘を行う場合
- 店頭取扱有価証券の募集等の取扱いを行う場合
- 上場有価証券の発行会社の発行する店頭取扱有価証券の投資勧誘を行う場合
- 「株式投資型クラウドファンディング業務に関する規則」または「株式コミュニティに関する規則」の規定による場合 など
店頭取扱有価証券の注文
協会員は、顧客から店頭取扱有価証券の取引の注文を受ける際は、その都度、その有価証券が店頭取扱有価証券であることを明示し、募集等の取扱い等を行う場合には、有価証券届出書、目論見書または会社内容説明書を取扱部店に備え置き、顧客の縦覧に供しなければならない。
上場株券等の取引所金融商品市場外での売買等に関する規則
売買価格等の確認及び記録の保存
協会員は取引所外売買を行うに当たっては、売買の価格または金額が適当と認められるものであることを確認するものとし、その確認の記録を保存する必要がある。
売買の停止等
協会は、公益または投資者保護のために必要かつ適当であると認めるときは、会員が行う取引所外売買及び協会員が媒介等を行う取引所外売買を停止することができる。
報告及び公表
- 会員は、同時に多数の者に対し、取引所金融商品市場外での上場株券等の買付けまたは売付けの申込みを行ったときは、銘柄名、買いに係る申込みにあたってはその銘柄中の最も高い価格を、売りに係る申込みにあたってはその銘柄中の最も低い価格を、数量等と併せて協会に報告しなければならない。
- 会員は、取引所外売買が成立したときは、銘柄名、売買価格、売買数量等を協会に報告しなければならない。
- 協会は会員から上記の報告を受けたときは、所定の時期に会員に通知するとともに公表する。
顧客への説明
協会員は、顧客から取引所外売買に関する注文を受ける場合には、あらかじめ、その顧客に対し、受渡決済に関する条件など会員が必要と認める事項について十分に説明する必要がある。
外国証券の取引に関する規則
契約の締結及び約款による処理
- 協会員は、顧客または他の協会員から外国証券の売買取引の注文を受ける場合には、その顧客または他の協会員と外国証券の取引に関する契約を締結しなければならない。
- 協会員は、顧客と契約を締結しようとするときは、「外国証券取引口座に関する約款」を当該顧客に交付し、その顧客から約款に基づく取引口座の設定に係る申込みを受けなければならない。ただし、すでに約款を交付している場合で、その顧客から改めて約款の交付を求める旨の申し出がないときは、約款を交付する必要がない。協会員は申込書の提出を受けた後、申込みを承諾して口座を設定した場合は、その旨を顧客に通知する。
約款には、顧客の注文に基づく外国証券の売買等の執行、売買代金の決済、証券の保管、配当・新株予約権その他の権利の処理等について規定されている。
外国証券の取引は、公開買付けに対する売付けを取り次ぐ場合を除き、すべて約款の条項に従って行われる。
資料の提供
- 協会員は顧客から、日本国内での開示の行なわれていない外国証券の注文を受ける場合、このことを顧客に説明しなければならない。
- 協会員は顧客から保管の委託を受けた外国証券について、発行者から交付された通知書及び資料等を保管し、顧客の閲覧に供しなければならない。また、顧客より請求を受けた場合には、発行者から交付された通知書及び資料等を顧客に交付する必要がある。
- 外国証券の発行者が公表した顧客の投資判断に資する重要な資料を顧客の閲覧に供するよう努めなければならない。
すでに発行された外国証券の勧誘
協会員が顧客(適格機関投資家及び一定の事業会社等を除く)に勧誘を行うことができるすでに発行された外国証券等、外国新株予約権証券及び外国債権は、投資者保護の観点から、原則として次の外国証券に限られる。
- 適格外国有価証券市場で取引されている外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債権
- 外国国債等や日本が加盟している国際機関が発行する債権
- 金融商品取引所による開示が行なわれている外国債権や外国優先出資証券
- 国内の取引所金融商品市場で取引されている外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債権
国内店頭取引
協会員が顧客との間で外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債権の国内店頭取引を行うにあたっては、「社内時価(合理的な方法で算出された時価)」を基準とした適正な価格により取引を行わなければならない。
なお、協会員は、顧客の求めがあった場合には、取引価格の算定方法等について、口頭または書面等により、その概要を説明しなければならない。
外国投資信託証券の販売等
対象証券 | 協会員が顧客(適格機関投資家を除く)に勧誘することにより販売等ができる外国投資信託証券は、外国投資信託証券に係る制度及び開示について法令等が整備されていること等の要件を満たす国または地域で設立され、募集の取扱いまたは売出しに該当する場合は、外国投資信託受益証券または外国投資証券ごとに定められた選別基準に適合しており、投資者保護上問題がないと協会員が確認した外国投資信託証券であることとされている。 |
選別基準 | 外国投資信託証券の選別基準は、外国投資信託受益証券、外国投資証券の別に定められている。 |
買戻し義務 | 協会員は、外国投資信託証券が選別基準に適合しなくなった場合でも、顧客から買戻しの取次ぎまたは解約の取次ぎの注文があったときは、これに応じなければならない。 |
資料の公開 | 協会員は、外国投資信託証券を販売した顧客に対しては、原則としてその外国投資信託証券に関する決算報告書その他の書類を送付しなければならない。
さらに、協会員は、自社が顧客に販売した外国投資信託証券が選別基準に適合しないこととなったときは、遅滞なくその旨を顧客に通知する必要がある。 |
外国株券等の国内公募の引受等
協会員が国内公募の引受等を行うことができる外国株券等は以下に限られる。
- 適格外国金融商品市場において取引が行なわれているもの、またはその市場における取引が予定されているもの
- 国内の取引所金融商品市場において取引が行なわれているもの、またはその市場における取引が予定されているもの
その他の規則
協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則
法人関係情報の管理態勢の整備について、以下の規則が定められている。
- 法人関係情報の管理部門(法人関係情報を統括して管理する部門)を定めなければならない。
- 法人関係情報の管理に関し、その情報を利用した不公正取引が行なわれないように、「法人関係情報を取得した際の手続きに関する事項」や「法人関係情報の伝達手続きに関する事項」などについて規定した社内規則を定めなければならない。
- 法人関係情報を取得した役職員に対し、その取得した法人関係情報を直ちに管理部門に報告するなど法人関係情報を取得した際の管理のために必要な手続きを定めなければならない。
- 法人関係部門について、他の部門から物理的に隔離するなど、法人関係情報が業務上不必要な部門に伝わらないように管理しなければならない。
- 法人関係情報の管理に関し、社内規則に基づき適切に行なわれているか否かについて、定期的な検査等のモニタリングをしなければならない。
反社会的勢力との関係遮断に関する規則
- 相手方が反社会的勢力であることを知りながら、その相手方との間で有価証券の売買その他の取引等を行ってはならない。
- 相手方が反社会的勢力であることを知りながら、その相手方への資金の提供その他便宜の供与を行ってはならない。
- 初めて有価証券の売買その他の取引等の係る顧客の口座を解説しようとする場合は、あらかじめ、当該顧客から反社会的勢力でない旨の確約を受ける必要がある。
CFD取引に関する規則
CFD取引参照とは、一般的には、証拠金を預託し、有価証券の価格や有価証券指数を参照する取引開始時の取引価格と取引終了時の取引価格の差額により決済を行う差金決済取引のことを指す。
協会員は、特定投資家以外の顧客に対して行う上場CFD取引の勧誘に関して、勧誘受託意思の確認義務と再勧誘の禁止が適用される。